マラセチア症とは
マラセチア症とは、皮膚に常在するMalassezia(マラセチア)属という真菌(カビ)が過剰に増殖することで起こる皮膚疾患です。
マラセチアは健康な人の皮膚にも存在する「常在真菌」ですが、高温多湿の環境や皮脂の分泌が多い状態などをきっかけに増殖し、さまざまな皮膚症状を引き起こします。
マラセチア属真菌は現在19種類存在しますが、ヒトに10菌種のマラセチア菌が寄生し、主にMalassezia globosaやMalassezia restrictaが関与すると考えられています。
代表的な疾患には、
- 癜風(でんぷう)
- マラセチア毛包炎
- 脂漏性皮膚炎(発症への関与)
- アトピー性皮膚炎の増悪因子
などがあります。
癜風(でんぷう)
癜風とは
癜風(でんぷう)は、マラセチアが皮膚の表面で増殖することによって起こる感染症です。
10~30歳代の若年者に多くみられ、夏場や汗をかきやすい季節に発症・再発しやすいことが特徴です。
主な症状
胸や背中、肩を中心に、
- 淡い茶色の斑点
- 白っぽい斑点
- 赤褐色の斑点
- 細かいフケのような皮むけ
が多数現れ、徐々に融合して広がることがあります。
痛みはほとんどありませんが、軽いかゆみを伴う場合があります。
癜風の原因
マラセチアは皮脂を栄養源として増殖するため、次のような条件で発症しやすくなります。
- 汗をかきやすい
- 高温多湿の環境
- 皮脂分泌が多い
- スポーツをする機会が多い
- 若年者
癜風の検査
当院では皮膚の表面から鱗屑(皮むけ)を採取し、顕微鏡検査(KOH直接鏡検)を行います。
マラセチアに特徴的な短く太い菌糸と胞子を確認することで診断します。
癜風の治療
治療の第一選択は抗真菌薬の塗り薬です。
通常は毎日外用することで改善が期待できます。
次のような場合には抗真菌薬の飲み薬を使用することがあります。(推奨度A)
- 病変が広範囲
- 再発を繰り返す
- 外用薬だけでは改善しない
皮膚の色は治療後もしばらく元に戻るまで時間がかかることがあります。
マラセチア毛包炎
マラセチア毛包炎とは
毛穴(毛包)にマラセチアが増殖して起こる炎症です。
ニキビと間違われることが多い病気ですが、治療法が異なります。
主な症状
胸・背中・肩・上腕に
- 赤いぶつぶつ
- 膿をもった発疹
- 強いかゆみ
が現れます。
ニキビと異なり、白ニキビや黒ニキビ(面皰)がみられないことが特徴です。
検査
膿疱や丘疹の内容物を採取し、顕微鏡検査を行います。
多数のマラセチア胞子を確認することで診断しますが、メチレンブルーなどで染色する必要があります。
治療
飲み薬(イトラコナゾール)の抗真菌薬が最も効果的(推奨度A)とされています。
軽症では抗真菌薬の塗り薬が有効な場合もありますが、保険適用外となることがあります。
ニキビ治療だけでは改善しない場合には、マラセチア毛包炎を疑って検査を行うことが重要です。
脂漏性皮膚炎との関係
マラセチアは脂漏性皮膚炎の発症にも深く関与すると考えられています。
皮脂を分解してできる遊離脂肪酸などが皮膚に炎症を起こし、
- 頭皮のフケ
- 赤み
- 顔の皮むけ
などの症状につながります。
そのため、脂漏性皮膚炎では抗真菌薬入りの外用薬やシャンプーが有効なことがあります。
日常生活でできる予防
マラセチアは汗や皮脂を好むため、日頃のスキンケアが再発予防につながります。
- 汗をかいたら早めにシャワーを浴びる
- 肌を清潔に保つ
- 通気性の良い衣類を着用する
- 高温多湿を避ける
- 適度に皮脂を洗い流す
- 再発を繰り返す場合は医師の指示に従って予防的治療を行う
フケ対策用のミコナゾール配合シャンプーは、マラセチアの増殖を抑えることが期待されます。
よくある質問
Q. 癜風は人にうつりますか?
マラセチアは誰の皮膚にも存在する常在真菌です。通常の日常生活で他人に感染する心配はほとんどありません。
Q. 癜風は治っても色が残りますか?
はい。真菌がいなくなっても皮膚の色調が元に戻るまで数週間から数か月かかることがあります。
Q. ニキビとの違いは何ですか?
マラセチア毛包炎は赤い発疹や膿疱が主体で、白ニキビ・黒ニキビ(面皰)がみられないことが特徴です。ニキビ治療で改善しない場合は皮膚科での診断をおすすめします。
Q. 再発しやすい病気ですか?
はい。特に夏場や汗をかきやすい方では再発しやすいため、スキンケアや予防が大切です。
当院の診療
当院では、顕微鏡検査(KOH直接鏡検)を用いてマラセチア症を正確に診断し、症状や病型に応じた治療をご提案しています。
「背中や胸の白い斑点が気になる」「ニキビ治療をしても改善しない発疹がある」「毎年夏になると同じ症状を繰り返す」といった方は、お気軽にご相談ください。
























