蕁麻疹(じんましん)は全身にかゆみや赤い膨らみが突然現れ、数時間から1日以内に出たり消えたりをくりかえす病気です。
一過性に出ることが特徴で、このような動きの速い皮膚症状の疾患は他にはありません。血管性浮腫などのように,皮膚のより深いレベルで浮腫を生じる”血管浮腫”は2~3日間持続することもあります。
発症して1カ月以内のものを急性蕁麻疹、6週間以上にわたるものを慢性蕁麻疹と呼びます。
原因が明らかでないことも多く、治療は症状を抑えることが中心になります。
当院では、日本皮膚科学会の蕁麻疹診療ガイドライン2018年に基づき、以下のような段階的な治療(ステップアップ療法)を行っています。
【STEP 1】抗ヒスタミン薬(第一選択)
- 症状を引き起こす「ヒスタミン」の作用を抑える薬です。
- 非鎮静性の第二世代抗ヒスタミン薬を中心に使用します。
- 通常量で効果が不十分な場合は、増量または種類の変更を検討します。
【STEP 2】補助的治療の追加
抗ヒスタミン薬で十分な効果が得られない場合は、以下の薬剤を追加します。
- H₂拮抗薬:胃薬としても使用されますが、皮膚のヒスタミン受容体にも作用します。
- 抗ロイコトリエン薬:アレルギー反応に関与する「ロイコトリエン」の作用を抑える薬で、気管支喘息にも使用されます。
【STEP 3】難治性への対応
STEP 1・2でも効果が不十分な難治性慢性蕁麻疹に対しては、以下の治療を検討します。
- オマリズマブ(ゾレア®)
→ アレルギーを引き起こすIgE抗体を抑える皮下注射薬。月1回投与。
→ 保険適用あり(既存治療で効果不十分な場合) - デュピルマブ(デュピクセント®)
→ IL-4・IL-13を阻害する注射薬。もともとアトピー性皮膚炎などに用いられていますが、蕁麻疹にも有効性が報告されています。 - シクロスポリン
→ 免疫抑制剤。副作用管理が必要なため、慎重に使用します。 - 経口ステロイド(短期間のみ)
→ 急激な悪化やコントロール困難な場合に一時的に使用します。
→ 長期使用は副作用リスクがあるため、基本的には短期使用にとどめます。
治療の目的と方針
- 完全な「根治」が難しい場合でも、**かゆみのない状態を保つこと(寛解)**が目標です。
- 適切な治療により、約半数の方は1年以内に、ほとんどの方は数年以内に症状が軽快するとされています。
- 症状が落ち着いた後も、自己判断で薬を中断せず、医師と相談しながら減薬・終了を検討します。
ご相談ください
慢性蕁麻疹は、日常生活の質(QOL)を大きく左右する皮膚疾患です。
長引くかゆみや発疹でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。




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